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無記名ドットコム

問われて名乗るもおこがましい

『No.9-不滅の旋律-』ネタバレ感想・舞台編

『No.9-不滅の旋律-』10/24(土)13時の回に行ってきた。

舞台は基本的に公演期間中1回しか観ない私、イレギュラーで2回目の観劇。(もともとはこの回しか行かない予定だったのが前半に1回入ってしまったので)

稲垣吾郎主演舞台「No.9-不滅の旋律-」オフィシャル

 

前回の感想まとめ。

 今回。

翌25日に無事東京公演が終了し、今日から大阪公演。プロデューサーさんのご挨拶がこの舞台の成功を物語っている。

https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=546939742124546&substory_index=0&id=399879443497244&refid=17

大阪北九州公演行かれるなら観ておいたほうが良い。

この作品はぜひ再演してほしいなぁ。これきりは本当にもったいない。

 

以下ネタバレ込の感想とメモ。

※長いです

 

 

大抵の舞台は後半になるにつれ良くなるもので、でも前半にしか見られない良さも沢山あって、それが生の舞台の醍醐味の一つだと思うけれど、予想ほど1回目の観劇時と大差が無くて、それだけ初めから完成度が高い舞台だったんだと思い知らされた。

もちろんレベルアップしたところは沢山あって、でもこのクオリティ結構前からでしたよねというのが最初の感想。

 

今回は2階席前方どセンターで観劇。上手に1台下手に2台のピアノ、床に当てられる照明の美しさ、背景映像の自然な溶け込み方。この舞台はここから観るのがベストかもというくらい全てがハマる席だった。

 

後半若干の強引さがあった気もするものの、全キャストに見せ場が無理矢理感なく割り当てられているのはさすが中島かずき脚本。そのまま全キャストに愛着が湧く。阿弖流為状態。

ベートーヴェンを血の通った人間らしく表現するために、彼の偏屈っぷりや激情型の小難しい性格を描くことはできる。でも“人間らしくすること”に囚われすぎず、しっかり“偉大な音楽家”として描くことも根底にあって、そのバランスがとても良かったなぁと思った。

まさに「人間としては最低、でも音楽は最高」なベートーヴェンがそこに生きていた。

 

1階から観た時はアンサンブルによるスムーズな場転、2階から観た時は舞台を最も具象化していた照明(:高見和義)による場転。どこから観ても美しい場転は白井晃演出ならでは。アンサンブルだけでも充分なところに照明でも贅沢に場面を繋いでいくので飽きない。

こちら(このページ以外もNo9関連記事あります)に照明のあーーここ素敵だったよーーー!!なイラストが沢山あるのでぜひ。

No.9 -不滅の旋律- ”pathétique” « びぼう六

私も十字路好きだった…!!

 

美術(:松井るみ)は、舞台全体がピアノの内部のように何本もの弦が天井から床まで伸びていて、舞台上の弦が不安定に揺れる中、奥の暗闇から耳を押さえて静かに出てくるベートーヴェンの姿が浮かび上がった冒頭で、完全に持って行かれた。

照明と美術に言及する感想が多いのもわかる。

 

そして『嵐が丘』(やまこーおめでとう!!)の時にも思ったけど、ああいう衣装が似合うってかなり重要ポイントかもしれない。そういう意味でキャスト陣が皆服に着られていなくて眼福。

吾郎さんは言わずもがな(細いし背高いし暴れていても決して品が悪くならないジェントルさ)。皆素敵だし格好良かった~

半グレーの髪の毛に変わってからのベートーヴェンの衣装は、あの有名な肖像画の服だったんだ!!と先日のスマスマを見ていて気が付いた。

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これだった気がする。

 

なにより外せないのがピアノ3台の生演奏とアンサンブルによる大合唱。

オーケストラ音楽以外のほとんどの劇中音楽をこのピアノが担う。同じ音楽を奏でていても弾き方にそれぞれの色が出て、客席に届く時にはとても幅のある音になっていた、気がする。3台同時に演奏するだけでなく、ある時はルートヴィヒの苦悩を奏で、ある時は劇中のピアノの音を奏で、ある時は一曲を三分割して奏でる。

アンサンブルも、ベートーヴェンがその音楽を捧げた大衆として、そして彼の音楽を完成させるコーラス隊として、一人ひとりが生き生きとしていた。(場転でも大活躍)

“音楽の力”をキャストたちが体現していく芝居進行と共に、観客自身が“音楽の力”を体感できて、このピアノとアンサンブルの効果は絶大だった。

できればグランドピアノで聴いてみたかった。もっとすごそう。

 

 

本編について。

 

重たくなりがちな本編の中、意外と笑いも散りばめられていて楽しかった。

干しブドウをメルツェルに投げつけるおこなルートヴィヒとその攻撃をかわそうとするメルツェルがなんだか癒しに見えてくる。

メルツェルってちょっと蛮甲ポジだよね…(阿弖流為の話)。

 

行き先知れずのルートヴィヒを皆で探す場面、マリアやナネッテが通行人を捕まえては(あのもじゃもじゃ!!)みたいなジェスチャーをしていて、それがちょっとツボだった。気持ちはわかるけど。

 

1回目観た時同様、1幕ラストで、ベートーヴェンの音楽を前に立ち尽くすマリアの背中はやはりとても印象的。

思えば1幕ラストも2幕ラストも、自らの音楽で指揮をするベートーヴェンとそれを見つめるマリアの構図で、マリアは彼の音楽に寄り添う運命だったのかなと思った。

 

「ピアノはいいな」以降の台詞が素晴らしすぎたと以前呟いたけど、あの場面のルートヴィヒが愛おしい。

明確にマリアに向けて言う台詞ではなく、独白でもなく、マリアがいる空間だ からこそ彼が吐露できた言葉のようで、ここを安易に独白シーンにしなかった脚本演出も、独白とも人に向けて言うのとも違う台詞の言い方をする吾郎さんもすごい。

「人間は難しい」という言葉は、一見価値観の違う周囲を指しているようで、実はルートヴィヒ本人のことを言っていたのか、と2回目ではっとした。彼自身、自分の頭の中に鳴り響く音楽はわかっても、自分という人間のことはわからなかったのかもしれない。

 

「最高の褒め言葉だよ」と言われたマリアが、ルイスと目を合わせたまま一瞬嬉しそうな顔をする。彼が去って、代理人として生きる覚悟を決めた顔になる前のその瞬間がとても好きだった。

 

自分が信じていたものが崩れ、唯一拠り所としていた頭の中の音楽が途絶えたルートヴィヒの絶望が人々を飲み込む中で、ただ一人飲み込まれないマリアがそっと近づいてルートヴィヒに自分の鼓動を伝える。

その鼓動を、鼓動ではなく「リズム」という言葉に表現したことがとてもいいなと思った。

「お前たちの響きを受けて、私そのものが共鳴する。」

 

ところが、舞台全体が良い雰囲気になりかけたところで、フリッツがぶちキレる。吠えるフリッツにルートヴィヒが言う台詞が良い。

「お前のその怒りも、全部俺にくれ!!」

(※戯曲本を購入したわけではないので台詞はあくまでニュアンス)

ここのフリッツとのやり取りが入ったことで、感動的にまとめられただけではない場面になった。

ルートヴィヒにとっては、人々の鼓動はリズムであり、感情もメロディーになる。

 

ラスト、舞台上の人々も、観客も、時を超えて全てが共鳴する中での第九の大合唱は本当に震えた!!タクトを振る後姿がベートーヴェンその人でしかなく、いつまでもその指揮する姿を眺めていたかった。

 

合唱と共に空から降ってくる五線紙。その後今度は後ろの映像で五線紙が空に吸い込まれていく。

それまで劇中では投げられ踏みつけられ散々な目に合ってきた五線紙が、ベートーヴェンの音楽と共に昇華されていくようでその光景が目に焼き付いた。

 

 

カーテンコールで礼の後キャストが五線紙を拾って盛り上がる中、吾郎さん(ここではもうベートーヴェンじゃなくなってたw)が隣でしゃがんで拾ってる優子ちゃん(もマリアじゃなくなってた)の後頭部に五線紙ぺしゃーってやって優子ちゃんがちょっとーってやってて大変微笑ましかった。

吾郎ちゃんと優子ちゃん。ほっこり。

 

あと本編とは関係無いけれど、関連グッズが良かったのもポイント高い。

プログラムは2000円でハイクオリティ。装丁も凝っていて写真も素敵で対談も3種類で歴史まで追える充実っぷり。写真頼りにならず読みごたえがある(その写真もベートーヴェン様はさすがのお写真で目の保養に)。

グッズも、芝居の赤文字のロゴをプリントしただけの最近の舞台グッズによくあるやつじゃなく、ちゃんと9という数字がデザインされ種類も豊富。トートバッグしか買えなかったけど。

こういうの大事だよね。舞台もコンサートも、スタッフT凝る前に発売用のTシャツ凝ろうか!!(叫)

 

吾郎さんファンが、センスのある品の良いスタンドのお花を、ちゃんと千穐楽までロビーを飾れるように時期をずらして送っていらしてさすがでした。

 

 

はー!!これでもだいぶ端折ったのにまだ書き足りない!!

とにかく大変良かったですということが言いたかった。

記事長くなりすぎたのでキャスト編へ続く。